【コスミック・アイ 第14回】

世界の未来を決める「2020年、米国大統領選挙」

― アメリカ合衆国は生き残れるか? ―

 

アメリカ合衆国大統領選の行方

   

アメリカ合衆国の大統領選の行方は日本の明日に決定的影響をもたらす。    

二期目のトランプ政権が登場すれば、今まで以上に対中政策は激しいものになる。香港への国家安全維持法適用と一国二制度の消滅により、GoogleやFacebookさえも中国内部・香港からの撤退を考え始めたようだ。米国はヒューストンの中国総領事館閉鎖を7月27日に強行した。「米国内で他国が主導する窃盗やスパイ活動は許さない」という意思を宣言したものだ。

テキサス州ヒューストン市は世界最大の医療技術開発機関等の集積地であり、中国スパイが総領事館を拠点に暗躍していた。コロナウイルスのワクチン開発技術を盗もうとしていた証拠を把握しての処置のようである。中国は単なる報復として成都の米国総領事館を閉鎖した。

  米国では更にこのような処置を拡大する可能性も指摘している。これは米中両国が国交断絶寸前にある事を意味する。米国の対中国政策は今後更に厳しくなるだろう。

米国内の政治的動きや、法を適用させる変化を注意深く見つめなければならない。   

トランプ政権は、2018年に「泥棒と付き合うものは、泥棒の仲間とみる」と対中政策を宣言している。ある日、いきなり日本企業が、米国金融機関との取引を一切停止されたり、また中国のスパイ活動を援助した罪で司法機関に逮捕告発されることも起こり得る。

  一方、日本企業は、例えトヨタであってもこのまま中国で企業活動ができるだろうか?中国工場勤務の社員はもちろん、日本国内勤務の社員たちまでも「国家安全維持法」に基づいて違反すれば処罰されることになる。法的処罰の権限は中国側にあり、処罰の理由は説明されない。他の日本企業はどのように扱われるか推して知るべしである。

   民主党大統領候補ジョー・バイデン氏が当選し大統領に就任した場合、米中関係が良くなることはないだろう。共和党はもちろん反トランプの民主党、更にリベラル・マスメディアさえも中国に対して非常に厳しい対応を求めている。バイデン氏は親中路線を選択したいであろうが、政権を支える周辺リーダーが激しく反対する。上下両院民主党リーダーたちはより激しく抵抗するだろう。なぜなら、バイデン氏は高齢で一期目就任時が78歳、二期目は82歳となるため、二期目は若いリーダーが民主党から選ばれるだろう。民主党はその選挙に勝たねばならないからだ。それゆえ対中政策はオバマ政権のように裏表のある非常に複雑な政策となる。

表は厳しい対中政策、そして裏は親中宥和政策を静かに進めることになろう。

対日政策はトランプ政権よりも厳しい政策となるだろう。日韓の関係を揺さぶる徴用工や慰安婦に対する賠償請求問題が、その舞台を中国にまで拡大する。この問題に関して、米国民主党政権は背後から中国を支持するだろう。日本の対中政策をめぐり、米国が反日的方向に走ることになる。

加えて、中国や韓国に進出した日本企業は、両国内において香港で施行された「国家安全維持法」による共産党政府からの政治的な強い干渉を受けることになる。韓国は中国との間で犯罪者引き渡し条約を結んでいるからである。

中国や韓国に進出した日本企業群は、極めて厳しい環境に直面することになる。

 

一 連続する大事件の勃発

 

2020年11月3日、米国の大統領選挙が行われる。ドナルド・トランプ大統領が二期目も共和党大統領として就任するか、それともジョー・バイデン民主党からの対立候補が新大統領になるかが決定される。しかし、2020年1月までは、民主党大統領が誕生する芽はほとんどなかった。

米国経済はトランプ政権下にあっては極めて高い成長率を維持し続けていた。トランプ政権の経済政策への評価が極めて高く、二期目の大統領再選は当然かのような雰囲気が充満していた。おまけに民主党大統領候補バイデン氏は政治リーダーとしては魅力に欠けていた。加えて高齢であり、当選しても就任するのが78歳、二期目は82歳就任という歴代最高齢になる。共和党トランプ大統領とは対等に戦えないだろうと予測されていた。

おまけに、副大統領候補の有力者たちは、左派色が強すぎるので、独立的中道派の支持を吸収するのが困難であり、大統領選の勝ち目はないとみられていた。民主党は過去三年間、上下両院で建設的政策提案ができずに、トランプ大統領に対する「ロシア疑惑」陰謀論の追求のみに終始してきた。加えて、リベラル・マスメディアは民主党左派と路線を一つにして、大袈裟な「ロシア疑惑」プロパガンダ報道に邁進してきた。

今にも、大統領が犯した国家反逆罪の証拠が露呈するかのような報道や議会証言が、3年以上の間も繰り返されてきた。しかし、告発する根拠たる証拠はなかった。国民はそのような空気に疲れ、嫌気が広がりつつあった。

トランプ大統領二期目の当選は楽勝であるかのように思えた。しかし、そのようなムードを一変させたのが、米国で爆発した武漢ウイルス・パンデミックだった。2020年の2月に入ると新型コロナウイルスのパンデミックが全米に拡大し始めた。それに続いて連続で大事件が起こった。それらすべてが現職大統領の責任を追及する政治的武器として使われ始めた。それにより「ドナルド・トランプ二期目大統領当選楽勝」のムードが短期間で雲散霧消した。誰も予期していなかったことが起こった。民主党大統領候補ジョー・バイデン氏が圧倒的有利な状況になったといわれる。

   

① 武漢ウイルス・パンデミック

  「武漢ウイルスの世界パンデミックをもたらしたのは誰か?」

米国ではアメリカ合衆国下院議員ジム・バンクス氏(Jim Banks 下院軍事委員会・防衛機動部隊の未来共同委員長)は昨年12月の初めには、中国内部から発せられる脅威についての情報を継続的に追いかけていた。12月初めから1月初めにかけて、武漢市で正体不明の感染症の発生とその脅威を訴える何人もの医者とジャーナリストたちがいたが、彼らは投獄され、みな消えてしまった。台湾は昨年12月31日には既に、WHOへそれが恐るべき感染症であることを伝えていたが、WHOは無視した。中国共産党政府は情報提供をWHOに行わなかった。テドロス事務局長は調査団を送らなかったし、中国政府に情報提供の要求もしなかっつた。中国内部で感染爆発が起こっていた真っただ中で、中国は春節(1月24~30日)を迎えた。この前後に300万人以上の中国人ウイルスをもって世界に出て感染させることになった。「世界への感染拡大は意図的なものではない」と中国政府とテドロス事務局長が主張するにはあまりにも無理がある。新型コロナウイルスの世界的パンデミックを中国とWHOは完全黙認したのである。WHOのテドロス事務局長が「人から人への感染」を認めたのは、なんと1月20日だった。世界へのパンデミック宣言を出したのは3月11日である。それは中国の習近平主席が武漢でパンデミック終息を宣言した翌日だった。WHO事務局長と習近平主席が合意のもとに「武漢のパンデミック終息宣言」をしたかのようだ。国連機関WHOのテドロス事務局長と中国の習近平国家主席により、すべてが隠されていたのである。

米国や日本のプロパガンダ(リベラル)・メディアは「トランプ大統領の初期対応の誤りが米国のパンデミックの原因である」という報道を繰り返している。しかし、これは全くのフエイクニュースである。「中国の習近平とWHOのテドロス事務局長による感染症情報の隠蔽が、武漢ウイルスの世界的パンデミックをもたらした」のだ。

「米国の武漢ウイルス・パンデミックの犯人」は?

米国での武漢ウイルス・パンデミックをもたらした犯人は、米国上下両院の民主党議員達とリベラル・マスメディアである。中国でウイルス感染の大爆発が起こっていた2019年12月と1月の2か月間、米国ではトランプ大統領に対する「下院による弾劾決議」と、「上院による弾劾決議の否決」という、極めてヒステリックな大騒動に支配されていた。上下両院の民主党議員たちの党派的ヒステリック状態に陥りな米国議会が大混乱に襲われていた。              

アメリカ合衆国下院議員ジム・バンクス氏(Jim Banks 下院軍事委員会・防衛機動部隊の未来共同委員長)は昨年12月の初めには、中国内部から発せられる感染症の脅威についての情報を継続的に追いかけていた。迅速な対応を要する重大問題として上下両院の議員たちに訴えたが、全く無視されてしまった。国民の命の危険を守ろうとする良心の声は、民主党両院議員たちが根拠や証拠もなく作り上げた集団的憎しみのヒステリーにかき消されてしまった。リベラル・マスメディアは敵意に燃える民主党の提供するプロパガンダ・ニュースを伝え続けた。

 米上院は2月5日、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判で、「権力乱用」と「議会妨害」の二つの訴追条項について無罪評決を出した。同じ日に米国での新型コロナウイルスの患者第一号が発見された。既にこの時にはもはや感染が大きく広がっていた。

「トランプ大統領の初期対応の誤りが米国でのパンデミックの原因」ではない。それは政治的敵対者による意味のない政治的プロパガンダである。米国でのパンデミックの原因の根は「中国の習近平とWHOのテドロス事務局長の情報隠蔽」である。そして、米国の武漢ウイルス・パンデミックの原因の幹は、「米国議会両院の民主党議員達の憎しみと集団的ヒステリー」である。ウイルスの感染を防ぐ政治責任を果たす為に必要な時間は、すでに失なわれていた。無意味な弾劾裁判騒ぎの最中に感染はニューヨークと大都市を中心に既に拡大していたのだ。

誰も知らなかった新型コロナウイルスの恐ろしさ

   新型コロナウイルスの感染力の強さと犠牲者の増加のスピードは、誰の予測をも超えていた。ニューヨーク州知事アンドゥリュウ・クオモ氏は、トランプ大統領の対パンデミック政策を全て否定してきた。しかし、彼と、彼の政策を同様に実行した民主党州知事たちは、州民の命の保護よりも民主党の政治的自己主張を優先した。それにより、彼らはコロナウイルスへの有効な対応の在り方が、何もわかっていないことが暴露された。

6月22日連邦保険局行政官がそれを明らかにした。「クオモ知事と民主党知事たちが医療養護施設についての独自の指針を作り上げ(3月13日)、自らの州で実行させた。それは連邦ガイダンスと全く矛盾したものであり不誠実なものだった。施設で新型コロナウイルスの感染者が出た場合、病院で治療して回復すれば、完全な陰性でなくても医療養護施設に返す。」というものだった。この指導のゆえにニューヨーク州では医療養護施設入所者の6%(6,000人以上)が死んだ。同じニューヨーク州でも、クオモ州知事の支持に従わないですんだ私立の医療養護施設や共和党議員施政化の医療養護施設の犠牲者は圧倒的に少なかった。他の民主党知事下の州も、犠牲者の数は同様に高いものだった。

政治化されて、民主党と共にトランプ攻撃にヒステリックなリベラル・マスメディアは、6000人以上もの死者を出した行政判断の過ちを問うこともなく、全く無視してしまった。意図的にそうしたのだ。

   武漢ウイルスのパンデミックは短期間に米国と世界との交流を断ち切り、企業をはじめとする国民経済活動をほとんど停止させ、国民を家に押しとどめ、未来への生活見通しまでも奪った。突如、広大な米国を暗闇が覆ったのだ。感染者数411万人、死者14万5千500人に及んでいる(7月25日 ジョンズポプキンス大学)。

このような事態になると大統領や中央行政機関トップは責任を追及され、弱い立場に立つ。国民の不安は、不満を生み、米国行政トップに向う。リベラル・マスメディアはそれを政治的武器として利用し始めた。「ロシア疑惑問題」で根拠の脆弱な、証拠なき告発を成功させようとしてトランプ大統領を3年以上も追求してきた。今度は「コロナウィルス・パンデミックへの対応失敗の責任」という政治キャンペーン・ニュースでトランプ大統領を追求し始めた。

 

② “Black Lives Matter “ デモから暴動へ、更に米国の破壊へ

   2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリス市でアフリカ系アメリア人ジョージ・フロイド氏が、警察官4人に路上の取り調べ中に、不当な扱いを受けて殺された。

既に、新型コロナ・パンデミックによる不安や不満を、怒りに換える要因がアメリカ社会に広く出来上がっていた。そんな時にこのような不当な事件が起こった。        

武漢ウイルスによる死亡者はミネアポリス市ではアフリカ系アメリカ人が70%に及ぶといわれた。ニューヨーク市は死者の40%がそうであった。ミネソタ市で起きたフロイド氏殺害事件により、不安と不満は「怒り」となり、火炎となって全米デモとして広がった。“Black Lives Matter “(黒人の命は大切である)がデモのプロパガンダとなった。

大デモをAntifa(テロリスト)が破壊活動へ誘導、民主党員が政治指導をした

   ジョージ・フロイド(George Floyd) 氏を警官が殺害したことで始まった抗議デモの目的と性質はすぐに大きく変わり始めた。最初は人権無視に対する抗議デモだった。やがて、どこからか沸いて現れてくるAntifa(反全体主義)と呼ばれる職業的なテロ組織がデモを先導し、暴力的デモへと変化させた。職業的テロ活動員は全米を行き来し、大衆デモを組織し先導した。彼らは活動的民主党員や支持者と連携し、米国社会にある深い矛盾(人種差別とその対立)を巧みな戦略で拡大させた。

「警察破壊運動」による「法と秩序の崩壊」へ

暴動と破壊活動を鎮圧するために警察が動員されると、デモはますます激しさを増した。アフリカ系アメリカ人の怒りは「反人種差別運動」にとどまらないで、「警察組織の撤廃運動」を加えるようになった。人権運動が極左政治運動に変化したんである。     

このような政治的デモを指導したのは活動的民主党員や民主党支持者であり、それを保護したのが民主党政治家とリベラル・マスメディアであった。特に民主党州知事や民主党市長下の地域は、彼らが発する行政命令で警察が抑えられ、暴力的破壊者を拘束や逮捕もできずに、見守るしかない状況が現れた。今や破壊活動を好むテロリストや犯罪者が、自信をもって出現し、日中に悠々と犯罪を行うようになりつつある。

こうして、民主党主導の州や市は「法による秩序」が崩壊したところが多くなった。

民主党左派州知事と市長を首長とするシカゴ市(イリノイ州)では「米国の独立記念日」(2020年7月4日)の祝日であるにも関わらず市民の77人が銃で撃たれ、14人が殺された(7歳の女の子を含む)。凶悪犯罪が急増し、無法地帯が生まれつつあるのだ。       5月中旬から6週間の間に6市で600人が殺された。これらの犯罪が民主党員または民主党支持者により起こされたという。巨大な無法地帯、暴力、そして殺人が拡大状況にある。それでも民主党政治家たちやその支持者たちは「警察を解体せよ」と主張し、「少なくとも警察の予算を大幅にカットせよ」と言っている。

多くの民主党市長達が迎合し、否、むしろそのように危険な政治運動の主人となっている。ニューヨーク市長ビル・デブラシオ(Bill de Blasio)氏は「ニューヨーク市の警察予算を1000憶円以上カットする」と宣言をした。

ジョージ・フロイド氏が殺されたミネソタ州ミネアポリス市では、民主党市長と民主党市議会が警察予算を半分にすると決定した。ミネアポリス市の警察署長は黒人女性である。「彼女は警察が崩壊する」と頭を抱えている。米国の左派民主党員や支持者たちは、今や「警察の解体」をしようと試みている。これらの市長たちは「法と秩序」という米国を構成する土台を破壊しようとしている。

   米国の伝統的価値観を汚し、消滅をさせようとしている。

   大デモの参加者、Antifa(テロリスト)、そして民主党運動員たちは、米国政治の価値観の中心にある「米国建国の精神」をあからさまに破壊する運動を始めた。米国の政治や社会に、発展、調和と平和、そして希望をもたらすために不可欠な「建国の父たち」や英雄たちの思想や実績を汚し、辱めている。全米で、彼らの像を取り去ったり、破壊したり、又はひどい落書きで汚したりしている。共和党議員たちが民主党大統領候補ジョー・バイデン氏に「建国の父たちや、英雄たちの像の破壊に反対する署名」を依頼したが、彼は署名をしようとしなかった。民主党大統領候補、上下両院の民主党議員達、そしてリベラル(主流)メディアは米国から伝統的な「米国独立宣言に見られる人間観や政治哲学」(建国の理念)を追放しようとしていることがはっきりした。

   そのような米国社会の激しい動きを恐れて、リベラルな知識人たちがそれに迎合し始めた。ニューヨークの歴史博物館に設置されていたテディ・ルーズベルトの像を、博物館側が取り去ってしまった。彼が馬に乗り、左右に黒人とアメリカ・インデアンが従う姿が人種差別的であると理由づけたと思われる。像を新しく造るというならば納得できるだろう。しかし、米国史上の大統領の中で最も尊敬される4人の大統領(他に、ジョージ・ワシントン、トマス・ジェファーソン、アブラハム・リンカーン)の一人を何故歴史博物館から取り去ってしまうのか説明がつかない。反アメリカ的行動である。現在の我々はテディ・ルーズベルトから学ぶべきものがたくさんある筈だ。他者に完全を要求し、満たされなければ憎んで破壊しようとする態度は、永遠の戦いと闘争をもたらす。このような態度は人間の本質にある傲慢そのものの現れである。典型的な共産主義運動家たちの態度と似ている。

また、プリンストン大学では理事会が決議して、「公共政策・国際関係論の研究機関・ウッドロー・ウイルソン・スクール」の名称を変えるという。ウッドロー・ウィルソン(元米国大統領・元同大学学長、国際連盟を提案)の名をつけていたが、それをやめて他の名称を付けることにした。

米国の名門大学がウッドロー・ウィルソンの名を追放してしまったのである。彼は米国史上価値がないと断定された。そのような価値評価を行ったプリンストン大学の傲慢な理事たちこそ、理事の座から追放されるべきではないだろうか。

   米国の国民一般は、米国の歴史的英雄たちの像を取り去るべきとは考えていない。例えば、確かに初代大統領ジョージ・ワシントンや第三代大統領トマス・ジェファーソンは自分の奴隷を所有していた。しかし彼らの像を公の場から取り去るべきとは考えていない。

アメリカ人の多くは「英雄たちも間違った側面を持っている。しかし自分はもっと多くの過ちを持っている。米国の英雄たちから、自分たちが他から学べない貴重な真理の多くを学ぶことができる。」と考えている。全米世論調査機関Rasmssen Poll(2020,07,03発表)は「国民の75%がそのように考えている」と発表した。明らかに言えることは米国のエリート層(民主党大統領候補ジョー・バイデン氏を含む)がアメリカ国民と異なる考えを持ちながら、自分たちの見解が普遍的真理であると考えていることである。

現在、アメリカ社会の基本を揺さぶっている極左Antifaは勿論、民主・共和両党の左派政治的エリート達、リベラル・マスメディアのリーダー達が特殊なアメリカ人であり、大多数の一般アメリカ人は彼らと大きく異なる考え方をしているのだ。しかしエリート達は、あたかも自分たちこそが真のアメリカ人であるかのように思い込んでいる。

 

― 続 ―

 

2020年8月16日

共創日本ビジネスフォーラム研究所

【コスミック・アイ 第13回】 

新型コロナ・ウィルス世界的パンデミック

その後、世界は何処へ行く?

 

一、恐ろしい感染症の教訓

(1)人の運ぶ感染症が国民国家を滅ぼす?

2019年12月以前に中華人民共和国の武漢市の一角から始まった新型コロナ・ウィルスによる感染拡大は、恐るべき力を発揮した。半年もかからずに世界の国々を鎖国と都市封鎖(Block Down)に追い込み、世界の経済活動を停止させ、諸国民を家に閉じ込めた。歴史上のどんな暴君も及びもつかない力で、今も人類を踏む付けている。

感染症は戦争よりも恐ろしいといえる。国家の崩壊や民族の絶滅に直接的に結びついてるからだ。それにもかかわらず、日本人の多くは戦争や核兵器が最も恐ろしいと思っている。「感染症」による犠牲者の数は「戦争」によるそれよりもはるかに多いのだ。

第一次世界大戦勃発の直前に感染爆発したスペイン風邪は、世界に約5億人の感染者と2,000~5,000万人(推定)の死者をもたらしたと言う。日本でも人口の半分(2,380万人)が感染し、388,000人が亡くなった。第一次大戦の死者は約1,000万人であることからも、スペイン風邪の猛威は恐るべきものだったことがわかる。

16世紀には強力な感染症ウイルス「天然痘」が、中南米の原住民を滅ぼすために生物兵器として意図的に活用されたようだ。天然痘が全く存在しなかった南米と中米に、スペイン人の天然痘患者によって持ち込まれた。さらに、それは彼らによりメキシコのアステカ帝国やペルーのインカ帝国を滅ぼすために利用された。スペインのフランシス・ピサロは、天然痘にかかったスペイン兵士が着用した外套をインカ帝国にプレゼントした。天然痘は猛烈な勢いで感染し、人口が1000万人以上から100万人前後まで激減したという。国家の機能は崩壊してしまった。そして、わずか170人弱のスペイン兵士達によってインカ帝国は滅ぼされた。メキシコのアステカ帝国はスペインのエルナン・コルテスとわずか400人の歩兵により滅ぼされたが、事実上は天然痘により滅ぼされたといえる。恐ろしい死神が海を越えて持ち込まれたのである。

感染症対策は国家の安全保障政策の大きな柱である

感染症問題は、元来、国の安全保障政策の重要な柱である。しかし、日本の新型コロナ・ウィルスに対する反応と対応は何故鈍かったのだろうか?深刻な感染症は首相と国家安全保障会議で扱うべきだった。日本国の政治組織と機能のすべてを発揮して対処せねばならなかった。それを厚生省が中心として処理をしようとした結果、様々な桎梏が生まれてしまった。また、日本の厚生省には、感染症が国民と国家の安全保障問題であるという認識が無いと聞いている。安全保障と感染症対応に対する認識の誤りがそうさせたようだ。感染症は単に被害の大小だけで扱うべきものではない。それによる、国民生活の破壊と、国家機能の崩壊を除けねばならないのだ。国民と国家の運命を左右するものである。

中国共産党政府は、新型コロナ・ウィルス感染拡大についての情報を意図的に隠し、それにより生まれる世界的パンデミックを政治戦略に活用しようとした恐れがある。中国政府は、12月初めにはすでに人から人へと新型コロナ・ウィルスが恐ろしいスピードで感染し、死者が激増していることを認識していた。しかし、春節(1月24~30日)を楽しもうとするすべての中国人達に海外への出国を1月末まで公然と認めていた。中国政府が団体旅行の出国を禁じたのは1月27日である。その時にはすでに266万人が世界を闊歩していた。日本にはそのうち92万人が旅行に来ていた。ヨーロッパ諸国とアメリカに大感染爆発が起こったのは当然である。日本で同様のパンデミックに至らなかったのが世界の不思議となっている。

歴史的に天然痘は、感染力と致死率の高さを非常に恐れられてきた。それは充分に細菌兵器になりうるものだ。1980年にWHOは天然痘の根絶宣言をした。同年、日本はワクチン接種を法的に廃止した。現在、天然痘のウイルスを保管する国は米国とロシアのみである。しかし、それを中国や北朝鮮等が所有していないとは言えない。米国は、生物兵器によるテロに対応するべく、米国CDC(疾病管理センター)に充分な量の天然痘ワクチンを保管させている。しかし、日本に保管ワクチンは存在しない。天然痘は感染率が非常に高く、更に致死率の平均が20%~50%というものだ。日本国民は、既に天然痘に対する免疫力をほとんど失っている。「感染症対処」は日本の安全保障政策の重要な柱であるべきだ。

  

(2)「難民と移民」に対する政策や考え方が新しくなる

安易な人道主義が、政治的混乱やテロリストを生み出した

人道主義が普遍化され、米国やEU諸国では難民や移民の受け入れが拡大されてきた。難民や移民を無造作に受け入れてきた結果、政治的混乱やテロリストが育つ土壌が造成された。

米国は伝統的に海外からの多数の移民を受け入れながら発展してきた。近年はヒスパニック(中南米系)が急激に増加している。2,002年には3,530万人(メキシコ系2,100万)であったが2010年には5,048万人(メキシコ系3000万以上)となりアフリカ系アメリカ人の人口を超えた。現在米国では不法移民が1,100万人以上存在するという。それに加えて、メキシコとの国境から不法移民が侵入し押し寄せる。2019年には100万人を超えると米国大統領は指摘した。アメリカ合衆国の不法移民政策が米国の政治的未来を左右するほどの重大な課題になりつつある。不法移民たちは法的立場が無いため、安い賃金で働かざるを得ない。米国には彼らの安い労働力に頼る企業や農場も多数ある。不法移民は厳しい社会経済的事情の下にあるため犯罪組織(麻薬密売)に係るものが多くなる傾向を持つ。麻薬密売のマフィア組織は全米に広がり、米国の青少年たちを淪落させ、深刻な治安問題を起こしている。

EUは人口5億300万人であり、EU域外の移民出身者は約2,040万人である。年間に120万人が流入し、60万人が流出している。不法移民は推定190万~380万人である。彼らは米国の不法移民同様に、社会経済的に厳しい状況にあり、テロ組織の温床でもある。

特に宗教と文化の違いから生まれる摩擦が大きな問題に成長しつつあり、EU諸国に排外主義的な民族主義的・保守政治運動が発展しつつある。

新型コロナ・ウィルスのパンデミックは、世界の難民や移民たちをめぐる状況を、わずか半年足らずで一変させてしまった。中南米からメキシコ国境を越えて米国を目指す不法移民たちや、EU諸国を目指すアフリカや中東からの難民が、その動きを停止せざるを得なくなった。恐ろしい感染症で多くの死者が増加している地域にあえて入国しようとしなくなった。また米国やEU諸国は、海外からの感染者の入国を止めるため、自ら鎖国状態にした。

やがて、米国やEU諸国のパンデミックは治まる。その後パンデミックがアフリカや中南米で本格化する恐れがある。それは米国とEU諸国の鎖国状態を継続することを意味する。こうして不法移民や難民問題は一時的に収まる。しかし、それは難民や不法移民問題を根本的に解決するには程遠い。

 

政治的・経済的政策だけでは永遠に解決しない

一体、移民や難民たちと、それを受け入れる国民が、どうしたら調和することができるのか? 政治的・経済的政策だけでは永遠に解決しない。豊かな米国、ドイツやフランスでも貧しい人たちは多数いる。彼らは生きるために一生懸命働いている。しかし、結果として海外からの侵入者たちとの「仕事の奪い合い、社会福祉の奪い合い」となる。当然、少数者が圧迫され、怒りと恨みを抱くようになる。そのような環境が、やがて、難民や移民たちを「保護をしてくれた国や国民」に対するテロリストに変身させることになる。難民や移民を受け入れる国が、単に経済発展のための労働力として彼らを利用したなら、彼らは心が傷つき、怒り、そして恨みを蓄積するだろう。また反対に、彼らが、その国の豊かさを自分の幸せのために利用しようとだけすれば、憎まれ、軽蔑され、そして片隅に追い詰められ、更に追放されるだろう。宗教や生活文化の違いが、心をさらに深く傷つけることになるであろう。そうしてテロリストや反政府運動、そして極端な排外主義運動が生まれ闘争が始まる。

 

出身国以上に第二の母国を愛し、社会に貢献し、隣人を慈しむ」

お世話になる立場の「難民や移民」の精神的自覚と姿勢が非常に重要である。例えば、米国に来た移民や難民は、「米国人よりも米国を愛し、社会に貢献し、そして隣人を慈しむ」ことにより、偉大な未来への活路が彼らのために開かれるだろう。中南米やキューバから来た移民達のリーダーの中に、そのような人たちが比較的に多いようだ。そのようなビジョンや動機を難民や移民者に提供することは、移民を受け入れる国の重要な責任でもある。この原則を実践することは難しいが、彼らが真に受け入れられ、成功するためにはそれ以外に道はない。歴史初期でのイスラム教徒やキリスト教徒の社会的広がりは、「そのような原則を実践して、異国や異民族に喜んで受け入れられた」というものだったのではないだろうか。

南米での日本人移民たちはその原則を実践した。その結果、彼らはブラジルを始めとする南米諸国で絶大な信頼を得るようになった。また、米国に渡った日本人移民たちは、やがて第二次世界大戦に直面することになった。米国の敵国(日本)の出身者であるため、スパイ扱いさえも受けた。この時代のアメリカ合衆国では、未だ人種差別があからさまに行われている時代でもあった。多くの日系青年たちが、米国社会の信頼を勝ち取るために米国兵として出征することを志願した。最前線の最も危険な場所に送られ、多くの人が亡くなられた。そのようにしてでも「人種差別」と「敵国出身の米国人」という立場を克服しようとした。

難民や移民たちを受け入れた国はそのような実践を援助する為に、その国の「言葉」と「歴史」を学ぶ機会を提供するべきである。                    

デモクラシーの経験がない国々から欧米圏にやって来て、その国の国民と対等に国民主権の行使者となる道は険しい道となるだろう。「自由、民主主義、そして法の支配」は、国民の一人一人に対して首相や大統領であるかのように「国全体の責任を持つ」ことを要求する。国民がいきなりそれを要求されると耐えられない場合が多い。典型的な例は北アフリカや中東で起こった「アラブの春」運動(2010年12月~)である。

「アラブの春」は「アラブの冬」をもたらした

アラブ諸国には、王政の国と共和制(大統領や首相)の国があるが、そのどちらも独裁体制である。中東は「独裁制の最後の砦」といわれる。ところが、2010年終わりから2011年にかけて突如、チュニジアで民主化を求める大規模デモが起こった。独裁的大統領に抑圧されていた民衆の反政府的主張がSNSの活用により全国民に広がり、それが大規模デモとなったのだ。チュニジアの大統領は後退し、新政権がたてられた。民主化を求める大規模デモは、直ちにリビア、エジプトにも拡大した。リビアではカダフイ政権と反政府デモ勢力との武力衝突が起こった。国連と多国籍軍が介入して、カダフイは殺された。リビアには新政権が建てられた。エジプトでは30年も支配したムバラク大統領が追放されて、イスラムの軍事政権が生まれた。

しかし、これらの三国は民主化の夢を実現できなかった。民主化の夢と大規模デモはバーレーン、オマーン、クエート、ヨルダン、モロッコ、アルジェリア等に広がった。しかし結局、到着点は民主化の停滞し、独裁制の復活、内戦の勃発、それに加えイスラム国(IS)の出現であった。あまりにもアラブの春は短く、直ちに冬に逆戻りをした。民主主義の夢はもとめるだけでは実現しない。民主主義社会は、国民の努力による「民主主義の創造」により実現される。

アメリカ民主主義の基礎は、100年以上の期間をかけて「小さな規模から実践され、創り上げられた歴史的集積体」である。さらに英国との独立戦争(1775~1783)を経験したうえで連邦制度を設立した。無視できないことは、米国や英国の民主主義政治は、強固な共通の価値観の上に作られていることである。漠然とした民主化の夢により作られたものではない。彼らは長い年月をかけて、自分の身を削って民主主義を創造したのだ。そのうえ、250年以上の急進的民主主義政治の経験を持つアメリカ合衆国や、350年もの歴史を積み上げた英国でも、国民は、現在も健全な自由民主主義社会を作るために苦悶をしている。

移民たちの政治参加が許され、政治的自由と活動が保障されたときに、自分たちへの援助を過度に要求することに固執すれば、その国の圧倒的多数派からの反対を受けて孤立する。政治的理由で合法的に追放をされるかもしれない。特に移民者の数が増加して、社会的基盤ができるときに、逆に難しい問題が発生するだろう。その時には、政治的自己主張が強くなる傾向があるからだ。

解決の鍵は「出身国以上に第二の母国を愛し、社会に貢献し、隣人を慈しむ」という原則を着実に実行することである。そうすれば彼らはやがてその国と自由民主主義の主人達となるだろう。

 

(3)「国境」に対する政策や考え方が新しくなる

恐るべき感染症は海外から国境を越えて侵入してくる。それは国民生活のすべてを停止させ、経済活動が停止し、家族との突然の別れをもたらす。しかも死者の数もおびただしいものになる。感染力が極めて高く、致死率も高い感染症は100年に一度以上発症すると考えるべきだ。今後、兵器として作られた人工的ウイルスによる感染症が現れる可能性も高い。日本は中国・ロシア(細菌兵器所有?)、そして北朝鮮(細菌兵器を所有)に海で接する。

特に日本は厳しく対応し、また準備する必要がある。

  

早期の国境閉鎖が感染症パンデミックを防ぐ

国境を越える人を通して感染症は侵入し、感染爆発をおこす。「いかに迅速に国境閉鎖を実行するか」が運命を分ける。その為には「事実のままの情報」を可能な限り「早く」また「正確」に知らねばならない。感染症を発症した地域は透明性を保ち、極力早く、事実に基づく情報をWHOや世界に発信せねばならない。それは国際的義務である。しかし発生源を抱える習近平政権はその責任を果たすことを全く無視した。しかもWHOまで巻き込んだ。その為、世界の諸国は「国境閉鎖による、最も有効に感染症パンデミックを抑えるチャンス」を失ってしまった。これは歴史的な犯罪行為である。

中華人民共和国の政権中枢は、一部の行政リーダーが誤った対応をしたかのように装っている。しかし、2億台以上(2020年)の監視カメラによるデジタル情報システムと、膨大な数の公安警察(160万人)が全国民を徹底監視している国で、武漢のような大都市で起こった事件を中央政府が知らないはずがない。政治的意図があってむしろ感染症の世界的拡大を謀ったとしか思えないのだ。今後、これは歴史的問題に発展するだろう。

2019年12月初めには中国武漢では「人から人への感染爆発」がすでに始まっていた。武漢の李文亮医師は12月末にはその深刻な危険をSNSのスクリーンショットで訴えたが「デマを流布した」として8人が処罰された。彼は犯罪者として激しく監視された。李医師も新型コロナ・ウィルスに感染し、2月7日未明に亡くなった。この間、中国政府は「人から人への感染症」であることについて一切触れなかった。WHOもそれに迎合し「人から人への感染」の可能性を全く無視した。台湾は昨年12月31日にWHOに「武漢で原因不明の肺炎が拡大している。複数の患者が隔離治療されている。人から人に感染している可能性がある。」と伝えた。しかし、WHOはその情報まで完全に無視した。加えて中国政府は、春節(1月24~30日)で国民が旅行することを全く止めようともしなかった。既に“国内で感染爆発が起こっていたにもかかわらず”である。266万人が世界観光のため中国を後にした。日本に92万人、他の国(多くがヨーロッパと米国)へ174万人が旅行した。日本は奇跡的に犠牲者が少なく済みそうだが、パンデミックはヨーロッパとアメリカに大打撃をあたえた。欧州では死者18万2000人、感染者223万人。米国カナダは死者11万6000人、感染者197万人となった。更にアジア諸国中東、ロシアさらにアフリカや南米に感染爆発が拡大中である。6月5日現在、感染者約656万人、そして死者38.7万人となっている(AFP/BBNEWS)。

このウイルスは人工的に何らかの手が加えられたものである可能性もあるようだ。米国がそのような疑いを持たざるを得ない充分な根拠がある。

2014年以来、米国の「国家健康機関」から4億円以上の税金が援助金として武漢国立ウイルス研究所に援助されてきた。しかし、中国国立武漢ウイルス研究所が、何故米国の国家健康機関から援助を受けられるのか、その資格については隠されてきた。それはバラク・オバマ政権時代のことである。そこではコロナ・ウィルスとコウモリとの関係について研究がされてきた。 “2018年、(トランプ政権下で)アメリカから外交官(科学専門)が中国の研究施設視察に繰り返し派遣された。彼らは、武漢ウイルス研究所(WIV)の安全性と管理体制にぜい弱性があり、支援が必要だと米国政府に求めた”とワシントンポスト紙は述べている。この6年間、武漢ウイルス研究所の状況についての情報を米国政府の専門家たちが得ていると考えるのは当然だ。トランプ大統領やポンペオ国務長官が「武漢ウイルス研究所が感染源だ」と指摘したが、その情報を根拠としているのだろう。

 

新しい国境の時代

国民の家庭や命を守るために国境の運用が重大になる時代がやって来た。新型コロナ・ウィルスの感染爆発がもたらした「新しい国境認識」である。それは「家庭と国家の生命を保護するための国境」である。この「新しい国境」の概念は、今まで支配的であったグローバリズムに基づく国境概念の対局にあるように見える。グローバリズムは今大きく変容することが求められている。即ち、安易なグローバリズムは大きな犠牲をもたらす。それは「新しい国境認識」と調和することにより「真のグローバリズム」へと変容せねばならない。

グローバリズムを代表するEU諸国の国境概念は、“国境を自由に越えて人や商品が行き来できる”ものだった。それは世界の政治思想に多くの影響をもたらしたようだ。しかし、それは新型コロナ・ウィルスの感染爆発により、瞬時に激しく否定された。恐ろしい感染症から国と国民を守るためであった。感染を防ぐために、短期間ですべての諸国が国境を閉ざした。それでも、すでに手遅れであり、とてつもなく多くの犠牲者をもたらした。

それまでは、国民生活に必要な物資はコストの安い地域で分業的に生産し、安さの恩恵を受けてきた。しかし、今回の感染症パンデミックで、それらを輸入しようとしてもできない事態に陥った。生産国の政府(中国)が政治介入して独占的所有を行い、政治的国益のために輸出するようになった。また、豊かな国が買い占めてしまう。医療用マスク、手袋、防護服、治療薬とその原材料、人工呼吸器、ワクチン(?)等を政治目的のため外交的に利用する等の諸問題が発生した。経済的合理主義に基づき利益を追求する「国境を越えた世界的分業経済」が大きな危機をもたらした。安いと思っていた生活用品が大きな危機をもたらした。日本国民はなんでも日本で生産できると考えていたが、日本からマスク、消毒用アルコール、医療用手袋や防護服が消えた。世界的分業体制を利益偏重のために利用したことがもたらした結果であった。 

 「もし、不足をしたならば国民の命にかかわるような物資は、極力自国内で生産する」という経済政策を選択し、「予備品の一定量をしっかり保管」して置かねばならない。

また、医師、看護師、医療従事者、医療施設、医療器具等は平時にはゆとりを持たせ、緊急事態に備え対応できる準備と国家予算による継続的な必要資金の投入が必要だ。

 

「国民と国家の生命を保護するための国境」

人口の増加とともに、個々の家庭が集合して作る国家は、人の四肢五体のように巨大な有機体を構成するようになった。国家が集合する世界も、未来には成長して、国家よりもはるかに巨大な有機体(生命体)となるだろう。有機体としての国家が、人体の一つの器官のようになって世界的有機体を構成して、両者の生命を維持するようになるだろう。                        高度な生命体(有機体)は固有の形や機能を繁殖し、また千年・万年もそれらを維持し続けている。そのような有機体が生命を維持し続けるために、皮膚に類するものがそれの全体を覆い、そして守っている。それなしには害虫、細菌、ウイルス等が有機体の中に侵入し、生命が破壊されてしまう。人間の体は最も高度な生命体であり、美しい皮膚が体全体を覆って生命全体を大切に保護している。

37(60?)兆個の細胞が一人の生きた人体を造っている。人体を構成する細胞に相当するのが家庭である。固有の個性を持つ何百、何千万の家庭が生きた国家を造る。人体の生命活動を保護しているのが皮膚であるように、国家の生命活動を保護するのが「国境」である。それは皮膚のような機能を果たす。「国境」が皮膚の働きを失えば、強力な感染症、軍事力を持つ邪悪な集団、種々の犯罪集団が侵入し、国家の生命を食い荒らして死に至らしめる。国を構成する細胞たる家庭まで死ぬことになる。

従来のように、想定される敵国から自国の「領土・領空・領海」や「資源」を守るために「国境」の管理を強化するだけではない。戦争よりも恐ろしい、また、いつ発生するかわからない、みえないウイルス感染症の侵入から国民(家庭)と国を守るためには、国境を有効にコントロールしなければならない。これは自然の法則に依拠するものである。グローバルな時代が来て、諸国家間の人と物の往来が、かつてでは想像もできないほど巨大になった。世界的交流が高まる程、人間社会は発展の可能性が広がる。しかし、新型コロナ・ウィルスの世界的パンデミックとその悲劇(2020年)は、逆にそれにより世界的崩壊の可能性が高まっていることを冷酷に提示した。人類は突如として現れる崩壊の可能性を、叡智と決断により、咄嗟に除去せねばならない。その為には国境が極めて重要な役割を果たす。

 

バイオテロや戦争に使われる「天然痘」やコンピューターウイルス

天然痘は歴史上もっとも恐ろしい感染症の一つだった。空気感染や飛沫感染をする極めて感染力の強いウイルスであり、また致死率も非常に高い。1980年にWHOが「天然痘ウイルスは根絶された」と世界に発表した。それ以来、米国と旧ソ連が天然痘ウイルスを厳重に保管した。しかし、天然痘ワクチンは米国(ロシア?)を除き存在しないようだ。このことは世界が極めて危険な立場に立たされていることを意味する。天然痘ウイルスがこの二国以外は所有されていないという保証はない。ソ連崩壊時(1991年)には大きな政治的混乱期があった。その時に、ロシアから他国に売り渡され、また盗み出されたかもしれない。中国や北朝鮮が天然痘を兵器として所有しているか否か、内情は全くわからない。天然痘ウイルスが生物兵器として用いられる恐れがある。恐ろしいことに、日本には、天然痘ワクチンの保管が全くないようだ。ワクチンのない国の国民にとっては天然痘ウイルスの怖さは新型コロナ・ウィルスの比ではない。

国境を越えて容易に他国に侵入するものは感染症のウイルスだけではない。コンピューターウイルスが気づかれないうちに自国に侵入し、感染を拡大して、国家の生命が奪われる可能性さえある。その時には社会活動のすべてが一瞬に止まってしまう。        戦争レベルのサイバー攻撃に対し、「バーチャルな国境」を作り上げ、強力なコンピューターウイルスの侵入を止めて、国家の生命と国民生活を保護することが重大な課題となっている。

コンピューターウイルスにも様々な力の差がある。国家が軍事目的で莫大な資金と人材を投入して開発するものは、ウイルスの能力は非常に大きい。他と格段の差がある。サイバー攻撃で情報を盗むのは、ほんの入り口のものである。高いレベルのそれは、気付かない間に大きな破壊活動を成功させる。列車、飛行機、等の交通機関や金融、通信や重要な企業、電力、水道等のシステムを一瞬に麻痺させることも可能である。米軍はそのような強力なサイバー兵器を造り蓄積している。陸、海、空と並ぶAmerican Cyber Command がありポール・ナカソネ大将が指揮している。

“最近、米軍はサイバー攻撃をイランに対しても積極的に活用している。2019年6月20日、イランにより⽶国の無⼈偵察機が撃墜されたことと、ペルシャ湾でのタンカー攻撃をイランの革命防衛隊が行ったことへの措置として、「イスラム⾰命防衛隊」の主要なデータベースを標的とし、米軍がサイバー攻撃をして成功した。そのデータベースは、ペルシャ湾での攻撃を計画するために⾰命防衛隊が使っていた。彼らは現在も依然としてシステム、ネットワークおよびデータの修復をしている。それ以後現在までペルシャ湾のタンカー攻撃は起きていない。” MIT Technology Review  09,2019

ロシアの軍や政府の機関が種々のサイバー攻撃を今でも仕掛け、ウクライナや中東での紛争に活用し、技術を高めている。中国も同様に特に米国企業のハイテク技術を盗み出し軍事技術として活用しようとしている。北朝鮮もそれにより諸国の銀行からお金を盗み出している。

今後の戦争は、武器による熱戦以前に目に見えないサイバー戦争から始まる。相手の国に深く進攻して、国家に致命的破壊を与えることが可能だからである。 

- 続 -

2020年6月11日

共創日本ビジネスフォーラム研究所

【コスミック・アイ 第12回】

 

新型コロナウイルスの世界的パンデミックと宗教の未来

 

一 情報統制による闇に世界が覆われた

(1)闇に覆われた中国武漢市で恐ろしい事件が進行していた

米国の代表的な保守系メディア(Fox News)は信頼性の高い情報源からとして以下のことを伝えた。アメリカ合衆国下院議員ジム・バンクス氏(Jim Banks 下院軍事委員会・防衛機動部隊の未来共同委員長)は昨年12月の初めには、中国内部から発せられる脅威についての情報を継続的に追いかけていた。この数年間、中国によるフアーウェイの脅威と孔子学院を活用する大学でのスパイ活動を注目してきたが、正体不明の感染病についての情報が反中国共産党の人たちから騒々しくなっていたからである。情報の発信源は香港、台湾、そして中国内部であった。12月初めから1月初めにかけて、武漢市で正体不明の感染症の発生とその脅威を訴える何人もの医者とジャーナリストたちが投獄され、みな消えてしまった。

この時にジム・バンクス議員は正体不明の感染症の脅威を上下両院の友人たちに訴えたが議会人たちは全く関心を持たなかった。下院民主党はトランプ大統領の弾劾訴追の決議をすることにのみに集中し走っていた。上院も同様だった。それが米国の新型コロナウイルスに対する対応を完全に遅らせる原因となった。1月31日に、”新型コロナウイルスは中国でスペイン風邪(感染者5億人)のようにものすごい速度で感染拡大している。米国では、まず防疫の徹底が第一歩だ”とツイッターで議員仲間に訴えた。しかし上下両院は、「下院の大統領弾劾決議」が「正体不明の感染症から国民を守る」事よりも喫緊の重要課題と考えていた。皮肉なことに、下院で民主党議員たちが弾劾決議に投票した当日に米国最初の新型コロナウイルス感染者が発見された(CDC発表2月15日)。新型コロナウイルスは既に米国に上陸していたのだ。

(2)世界は中国の情報統制による闇に覆われた

 中国武漢で発生した新型コロナ感染に対し、世界で最も見事な模範的対応をしたのは台湾である。4月11日までの台湾の感染者数は382人、死者は6人にとどまっている。中国との地理的近さや、経済的親密度を考慮すれば賞賛に値するといわざるを得ない。台湾の蔡英文総統の情報把握がどの国よりも早く、迷いなく防疫処置を展開したからである。

 WHO事務局長テドロス氏は4月上旬にジュネーブの記者会見で「台湾が私に3か月以上にわたり私を攻撃し続けている。人種差別的発言もあった」と台湾を攻撃した。不思議なことに感染拡大を抑えることに最も成功した優等生をたたいたのだ。台湾外交部は「謝罪」を要求し、蔡英文総統も強く抗議した(4月11日)。台湾新型コロナウイルス対策本部トップの衛生福利部長・陳時中氏は記者会見で事実を指摘し「昨年12月31日にWHOに伝えた。中国湖北省武漢で原因不明の肺炎が拡大している。複数の患者が隔離治療されている。人から人に感染している可能性があると伝えた。しかし、無視された」と述べた。WHOは「人から人への感染の可能性については触れられてない」と反論した。陳時中氏は「専門家でありながら素人であるかのように装っている。隔離治療がその警報でないというならば何が警報になるのか?」と応じた。

 台湾は昨年12月31日には既にWTOへ「人から人に感染する」ことを伝えていた。彼らは中国の情報のみを信じ、中国が嫌がるそれは最初から拒否していた。中国の専門家チームトップが「人から人への感染」を認めた後に、WTOは初めてそれを承認した。それは1月20日以後だった。テドロス氏は新型コロナ感染のパンデミック(感染爆発)宣言を出すのも遅れさせた。3月10日、習近平が武漢に入り事実上のパンデミック終息を表明した。すると、その翌日にテドロス事務局長が「世界に対するパンデミック宣言」を出した。その時にはすでに新型コロナウイルスの感染は中国から世界へすでに拡大していた。WHO事務局長テドロス氏は習近平政権とともに事実を隠蔽し、その恐ろしい事実を世界が事前に認識できないようにした。世界が国連機関を通して情報統制をされたのである。習近平政権とWHOの情報統制による闇が世界を覆ってしまったのだ。新型コロナウイルスの世界的パンデミックによる悲劇は自然災害ではない。中国共産党独裁政権と国連を構成する特殊な機関WHOが巻き起こした人災である。本来、感染拡大は最小限に抑えられたはずである。

 2月2日、米国は中国からの渡航者の全面入国禁止を実行した。日本が中国からの入国制限を強化したのは3月5日だった。中国の春節(1月24~30日)には100万人ちかい観光客が訪日していた。安倍政権は新型コロナウイルス感染の政治的対応を完全に間違えた。4月に習近平の訪日を配慮するあまりのことであろう。WHOの情報と対応、そして中国政府が提供する情報に基づいてすべて対応策を実行してきた。国民に危機をもたらした。今後その結果が現れる。恐ろしいことにならないよう祈るばかりである。

 4月14日、米国大統領ドナルド・トランプ大統領はWHOへの米国からの拠出金を一時的に停止するように指示したことを宣言した。同時にその理由をいくつか提示した。

① WHOは中国側からの誤った情報を押し付けた。例:「人から人への感染は無い」、「中国への渡航禁止を出す必要はない」

② 中国に専門家を早い段階で派遣、調査し、そして情報開示の透明性欠如を断固指摘するべきだった。感染拡大を抑え込めたかもしれない。

③ 米国が中国からの入国禁止処置(2月2日)をとったことにWHOは反対した。彼らは最も危険な判断をした。

トランプ大統領はWHOに対し事実をありのままに指摘したに過ぎない。

 

二 新型コロナ感染パンデミックと宗教の未来

 2020年4月9日、第266代ローマ教皇フランシスは英国の記者のCOVID-19に関する質問に対し次のように答えた。

 「中国から発生した新型コロナウイルスの感染爆発の危機は、間違いなく人間の失敗に対する自然界からの反応である。気候変動がもたらす様々な大惨事の一つとして自然が訴えているのである」 (THOMAS D WILIAMS,PH.D  BREITBART 9 April 2020)

 教皇フランシスは、2013年に就任した。2015年に自然環境保護に献身する歴史上最初の教皇として声明を述べた。その中で「人間の自然界への搾取を非難」している。

 現教皇が自然を非常に愛される方である事は間違いないと思う。しかし「新型コロナ感染爆発の世界危機は、地球温暖化を止めることに失敗した人類に対する自然界の訴えである」としたことは、教皇が宗教者として実に深刻な誤りを犯したと言わざるを得ない。

 フランシス教皇は二つの誤りを犯したようだ。一つは「新型コロナウイルスの世界的感染爆発は人災である。」ことを隠蔽し、結果として中国とWHO事務局長を保護するにつながる声明となった。二つ目は、教皇が「息も絶え絶えで悲嘆にくれる隣人たち」を助けようとせずに、高邁な説教だけをした。すなわち、「新型コロナウイルスに有効な新薬やワクチンの開発」を訴え、激励し、そして自らがバチカンを率いて解決のために他の方法を実行することもなく、ただ「地球温暖化の防止を実行することが根本的な解決方法だ」とのみ訴えた。

 

(1)一つ目の誤り:中国とWHO事務局長の誤りを覆い隠そうとした。        

 フランシス教皇の声明は「COVID-19による世界的悲劇は人災である」ことを「美しく覆い隠す」ために発せられたのではないか。現段階でも『中国政府とWHO事務局長テドロス氏による「情報操作と積極的盲従」が対応を遅らせてしまい、世界的感染爆発の原因となった』ということが明確になりつつある。新型コロナウイルスによる世界的パンデミックの悲劇は「政治的悪意がもたらした世界的人災」である。中国が透明性を堅持して、12月にその事実と危険性を世界に知らせる責任を果たしていたならば、またWHOが中国に利用されずに世界のために確固たる行動をとっていたならば、新型コロナ・パンデミックは現在のようにはならずに、早めに終息段階に入ったであろう。今後、それが人災であったことが益々明らかになるであろう。

 COVID-19による世界的悲劇を解決するためには、もはや有効な新薬かワクチンを開発するしか方法がない。バチカンは世界のカソリック教徒の医学研究者、製薬企業、あるいは豊富な富を所有する人々に「生死の境にある世界の隣人を助ける為に、有効な新薬かワクチンの開発に総力を挙げて協力をしていただきたい」と声明を発しないのは何故だろうか?勿論、カソリック系病院の医療従事者たちはコロナウイルスの重症患者を救うために「命をささげて命を救う為の戦い」の真っ只中である。しかしフランシス教皇とバチカンは「新型コロナウイルスの感染爆発の危機は、地球温暖化を抑えることを失敗した人間に対する自然界からの訴えである」と指摘するにとどまっている。

 フランシス教皇の声明は「COVID-19による世界的悲劇は人災である」ことを「美しく覆い隠す」ために発せられたものだ。中国とWHO事務局長の誤りを覆い隠そうとした。

 実際、教皇フランシスは驚くほど共産党独裁の中国が好きなのだ。今や習近平政権に対する協力の手を差し伸べたのではないかと疑られても当然なほどである。フランシス教皇が就任(2013年)して以来、バチカンは中国共産党に急接近している。2018年9月22日、ローマ法王庁が「カトリック教会の司教任命をめぐる中国政府との歴史的合意に達した。」と発表した。しかし、合意の詳細は明らかにされていない。問題の「司教任命のプロセスについての合意」に対しては現在まで言及を除けている。フランシス教皇は「中国の司教は自分が任命する」と主張している。しかしその後、バチカンが過去に破門した「中国政府公認教会が独自に選んだ司教たち7人」をフランシス教皇が司教として公認した。中国ではカソリック信者は推定1千200万人を超えるといわれる。中国カソリック教会は共産党が司教を任命する「政府公認協会」と「非公認の地下教会」に分裂してきた。地下教会信者たちはバチカン任命の司教たちに守られてきた。しかし今や、地下教会の信者たちは共産党当局によりいつ逮捕・投獄されかわからない境遇となった。フランシス教皇は、習近平政権に受けいれられようと地下教会のカソリック信者を捨て、彼らを中国共産党に売ってしまった。

 中国を訪ねて共産党政府と国民(共産党員)に歓迎されることを熱望し、最初の訪問地を湖北省武漢とするようだ。そして、習近平政権の新型コロナウイルス感染対策への賛美を世界に向け高らかに宣言する意図であう。フランシス教皇が「COVID-19による世界的悲劇は人災である」という事実を「美しく覆い隠そうとした」と言える根拠が多数ある。

(2)二つ目の誤り

 「教皇は息も絶え絶えで悲嘆にくれる隣人たち」を助けようとせずに、高邁な説教だけをした。すなわち、「新型コロナウイルスに有効な新薬やワクチンの開発」を訴え、激励することはなかった。そして自らがバチカンを率いて解決のために他の方法を実行することにも触れなかった。ただ「地球温暖化の防止を実行する」ことが根本的な解決方法だとのみ説いた。現在も感染者が拡大し、死者も増大している。既に世界の感染者はおよそ260万人超、死者は18万人超(4月23日現在)となった。1日で7,000人も死者が増加している。今後どこまで拡大するか予想もつかない。歴史を振り返れば愛を実行する責任を放棄した宗教の未来には、「自らと、国や世界を巻き込む悲劇」が待ち受けている。  

 皮肉なことに、徹底的に神を否定するカール・マルクスの共産主義は神を信奉するキリスト教社会で生まれた。キリスト教が間違った宗教だったからではない。共産主義がキリスト教社会から生まれ育った理由は、「キリスト教社会が、イエスが身を犠牲にして教えた“愛の実践伝統”を捨ててしまった」からだ。教会組織やキリスト教社会が間違ったのである。「恩讐さえも愛せよと実践して教えたイエスキリストの愛」を説きながら、西欧キリスト教社会が「イエスの愛の実践」を忘れてしまった。さらに、歴史の長きにわたりユダヤ人を呪い、憎み、そして幾度も冷酷に虐殺さえ犯してきた。キリスト教社会が所有した憎しみ、呪い、そして殺意がマルクスの共産主義思想を生んだといえる。マルクスの共産主義思想の政治的実践は少なく見ても1億人以上の人々を虐殺した。それは歴史上の疫病大流行や大戦争さえも及びもつかない未曽有の犠牲者を生んだ。

 カール・マルクスはユダヤ人だった。父はユダヤ教のラビであり弁護士だった。ドイツのプロイセン地方で生活する弁護士の父には絶えず宗教的圧迫があった。たまらず彼はキリスト教に改宗した。ユダヤ教ラビの家系を誇る妻は絶えず夫と争った。カール・マルクスは父母が宗教問題で争いあう姿を見ながら、キリスト教に憎しみを持つ若者として育った。彼のゆく場所のすべてでキリスト教社会およびその政治基盤が敵となり立ちはだかった。大学教授の道がとざされ、やがて編集長になったライン新聞をつぶされ、フランスからベルギーに逃れ、最後に英国ロンドンで64歳の生涯を終えた。彼は自らの命が尽きるまで資本論を書き続けた。それは未完であった。葉巻をふかし、タイプを打ち続けながら死んだといわれる。彼はキリスト教社会に追われながら、キリスト教を憎み、そして呪いながら彼自身の革命思想を構築した。“神を呪い、キリスト教(宗教)は軽蔑され憎まれるべき”とする執念を彼の哲学、歴史観、経済学として体系化した。資本主義経済が諸悪の根源であるから徹底して破壊するべきという闘争思想を完成させた。

 何故、マルクス主義は大きな影響力を歴史に残し、いくつもの巨大国家を飲み込むまでに至ったのだろうか。第一に、マルクスの共産主義哲学は単なる知的哲学ではなく、誰もが心のうちに抱える“恨み、憎しみ、軽蔑と優越感、そして闘争心等の情念に火をつける”ものだった。聖書や宗教の経典の教えと正反対の内容でありながら、それらに勝る負の情念を燃え上がらせ、大衆の心を奪い、そして繁殖した。 第二に、マルクスの共産主義思想は「ヒューマニズムに基づく社会正義の実現」を追求した。「人間疎外からの解放」と、革命による「自由と平等で豊かな共産主義社会実現」である。これらは良心的な若者の心を大きく揺すった。

(3)宗教の未来

 「息も絶え絶えで悲嘆にくれる隣人たちを助けようとせずに、高邁な説教だけをする宗教の未来」はどうなるだろうか?

 ロシア10月革命(1917年10月)に似た、しかしより大規模な革命を世界にもたらすかもしれない。その時には宗教圏が、徹底した闘争的無神論者たちの支配のもとで、軽蔑と憎しみの対象となり、絶滅に向けて追い詰められることになるだろう。

 西欧キリスト教社会でマルクスの共産主義が生まれ、最初の共産主義独裁国家はロシアに実現された。19世紀末のロシア正教会は正に「息も絶え絶えで悲嘆にくれる隣人たちを助けようとせずに、高邁な説教だけをする宗教」そのものだった。国民の大多数は農奴で非常に貧しく、しかもロシア正教会に対し敬虔な信仰を持ち、献身的だった。ロシア正教会はロマノフ王朝に保護され、国税による収入を得、また非常に裕福な資産を所有していた。極貧の農奴の身分に心を痛めて、解放しようという努力を全くしなかった。自分たちの与えられた立場に安住していた。ロシア正教会の聖職者たち、農民、商人、軍人、官僚、そして貴族たち全ての人たちが“個人として天国に行くため”にのみ信仰上の関心を集中していた。イエスの愛の実践に生きることよりも、自分が天国に行く特権を得る事ことを優先した。良心的で優秀な若者(特に貴族の子供たち)達はこのようなロシアの後進国的現状に失望し、ロマノフ王朝の専制的権力とロシア正教会の聖職者たちの偽善的あり方を軽蔑して憎んだ。ウラジミール・レーニンもその一人だった。彼らを魅惑したのはプロシア、オーストリア、フランスからロシアの大学に招かれた招かれた学者達だった。彼らが西欧先進国の思想として社会主義やマルクス主義思想を紹介した。

 正義感の強い、良心的で優秀な若者たちは社会主義や共産主義思想に酔いしれた。かれらにとってロシア正教会のリーダーたちは、「専制権力に迎合する軽蔑するべき偽善者であり、憎むべき人たち」としてしか見えなかった。ロマノフ王朝末期のロシアは精神的権威の中心を全く失っていた。ロシアの精神的権威の中心の座には、ロシア正教会に代わり「社会主義者」や闘争的無神論者たる「マルクス主義者」が座るようになった。その小さな流れは短期間で大河となり、10月革命の成功(1917年)でロシアを飲み込んだ。ソビエト連邦を誕生させ、更に共産主義国家群を世界に生み出した。それらの諸国では例外なく大量殺りくが行われ、共産党独裁による徹底統制と宗教弾圧が行われ、まさに地獄と化した。

 宗教が愛の実践を捨てたならば、民族や世界の精神的権威の座に、偽りの愛(本当は憎しみと軽蔑)を実践する人たちが座るようになる。新型コロナウイルスによる災害は世界の宗教に深刻な問いかけをしている。真に愛を実践する宗教は輝き、そして栄える。しかし、愛の実践を放棄して悲惨な隣人を助けようともしない宗教は、分裂し、生命力を失い、そして崩壊する。そして、やがて世界を支配する悪魔を生み残すだろう。宗教が悪魔をこの世にもたらし、彼に世界支配の座をささげるだろう。

2020年4月26日

共創日本ビジネスフォーラム研究会

 

【コスミック・アイ 第11回】

 

2020年、習近平主席訪日・国賓待遇

「日本は大陸に経済利益を求めて進出すれば滅亡する」

 

二、中国は救いを求めて日本に接近する

 

1 既に末期症状にある中国経済

自滅に向かい突進した中国                   

 ⼈⺠⼤学の向松祚教授が中国不動産バブルの破裂時期が近いことを2019年に入り強く警告している。彼の指摘によれば“「中国の不動産市場規模は売り出し中不動産の延床面積から推計すると60兆ドル(約6,600兆円)になる。全世界の1年分のGDPを合わせても70兆ドル(約7,700兆円)あまりなのに、そんな馬鹿な話があるだろうか!」” 

 この数字がどこまで正確なのか知る由もない。しかし、中国の権威ある人民大学(中国共産党中央委員会の直属)教授が提示したデータである。真実に近いデータであろう。不動産市場の限られた需要に対し、途方もなく大量の不動産建設と供給がなされたことを示している。しかも、それらは極めて高い利息による天文学的債務債権となっている。それはある瞬間に不良債権化する運命を抱えている。

 同様の指摘が、ノーベル経済学受賞者「ポール・クルーグマン」(米国経済学者)によっても5年前になされていた。彼は1982年にレーガン政権で大統領経済諮問委員会の上級エコノミスト、世界銀行、EC委員会の経済コンサルタントを歴任している。

“中国の投資額は国内総生産(GDP)の48~49%というばかげた水準となっている。年率10%成長ならこれだけの投資を維持することも可能だが、成長率はどんどん下がっており、債務水準が上昇している。 …消費や内需が弱く、巨額の貿易黒字や投資で景気を下支えしてきたが、もはや可能ではない。 …今後、中国は大きな調整が必要になってくるが、うまく着地できるか。深刻な状況になっており、心を痛めている。これから数年、世界経済にとって中国はリスクになる”

(特別講演イノベーション、日立製作所フォーラム2014,10,31)

この講演でポール・クルーグマンが中国経済の近未来を予測して、すでに5年が過ぎた。この間、中国では不動産を建設し続けてきた。自滅に向かい突進し続けてきたのだ。

 もはや、中国の不動産の購買力は急速に落ち込んでいる。価格を下げても売れなくなっている。ある日あるとき、突然、不動産資産が無価値になる可能性があるのだ。

⼈⺠⼤学の向松祚教授が中国不動産バブルの破裂に向かい突進する中国にあきれ果てているが、当然のことだろう。

巨大な「双頭の“灰色の犀”」が暴れ始めるのか

 習近平国家主席が2019年の1月に“灰色の犀”を治めねばならないと説いた。“灰色の犀”は、今にも狂暴に暴れだすかもしれない中国不動産市場を意味している。不動産バブルの崩壊が中国経済全体を破壊させる可能性を警鐘乱打したものである。債権の不良債権化は何処にでもある事柄で、普段は静かで平穏である。それは、平凡で静かな灰色の犀のようである。しかし、怒り狂い暴れ出すと誰も手に負えなくなる。中国共産党トップが「不動産市場が狂暴な“灰色の犀”に代わる危険性を持つ」ことを予言したものとさえいえる。

 あえて言えば中国にはとてつもなく巨大な化け物がいる。それは一匹の巨大な「双頭の“灰色犀”」である。その片方の頭がバブル化した不動産市場であり、他の頭が企業債権の蓄積である。この双頭は一つの灰色の巨体をコントロールしている。その巨体は富への欲望、政治権力、不法、無責任、詐欺、そして快楽を食べて成長した。この化け物が今にも狂暴化して暴走し、中国全体の経済を破壊しかねないのである。

中国の不動産バブルが破裂するならば、中国の金融システムが壊滅的崩壊に追い込まれる。中国に起こった巨大な津波が徐々に影響を和らげながら地球を一周するのだろう。中国経済は南米ベネズエラのようなハイパーインフレに襲われることになる。信じられないようなことだが、ベネズエラの議会は「2018年の物価上昇率が年率169万8488%だった。12月の月間物価上昇率は141%だった」と発表した。国際通貨基金(IMF)は2019年中にインフレ率が年率1000万%に達すると予測発表していた。中国の不動産バブルが破裂すれば、通貨・元は単なる紙切れとなり価値は全く失われる。この影響は中国経済に依存してきた国々がまず大きく受け、それから周辺に伝わってゆく。

悪い時には悪いことが重なる

2019年は米中経済戦争が本格化した。2017年1月、ドナルド・トランプ大統領が就任した時には米国の潮流は大きく変わっていた。しかし、習近平政権周辺はそれをとらえられなかった。「すでに始まっていた米中経済戦争」(Cosmic Eyes2019,02)で述べたように習近平政権は“前オバマ大統領周辺のスタッフやリベラルなメディアの情報を信じて、トランプ大統領の言葉や政策は気まぐれで、すぐに変わる。それどころか、まもなく大統領府から追放される”と考えていたのだろう。事実は逆だった。この新大統領は45年間も変わらなかった歴代大統領の対中関与戦略(Engagement Strategy)を廃棄処分にしてしまった。

かつて、ロナルド・レーガンRonald Reaganがソビエト連邦を「悪の帝国」と呼びその本質を明確にした(フロリダ州オーランド演説1983,3,8)。彼はソ連への徹底した対決を始めた。今度はドナルド・トランプ大統領就任の1年後、2018初めから、米国は中国を「米国と自由民主主義国家の敵」と位置付けた。そして経済戦争を仕掛けた。驚いたことにトランプ大統領の対中戦略に対し、共和・民主の上下両院議員が超党派で支持をした。対中経済戦争のために必要な立法処置を圧倒的に支持したのである。

 

2 米国の対中貿易戦争の戦術目標

①「サプライチェーンの変更」

 米中経済戦争を始めた第一の戦術目的は、中国の対米輸出商品のサプライチェーンを変えることである。米国は最初に中国からの輸入品に高額の関税をかけることから始めた。2018年8月から、500億ドル(5兆5000億円)分に対する中国製品に25%の関税をかけることを決定した。すると中国は報復関税として対中輸出製品500憶ドル分への報復関税として執行した。アメリカは、さらに中国の対米輸出製品(6,000品目、2000憶ドル分)に25%の関税をかけることを決定した。中国の米国からの輸入製品は総計でも1,300憶ドルであり、残りの800憶ドル分以上は関税対象を拡大できない。「米国は総計で5,000億ドル分まで関税対象枠を拡大し、それに25%の関税をかける」と主張している。

 最初からこの争いは中国が圧倒的に不利であった。自由経済市場では「お客様は神様」である。国営企業中心の中国の政治リーダーは、この原則を軽くとらえていたのだろう。他の国でも作れる安価な製品を大量に米国に輸出して、米国市場で富を得てきた。それがいつまでも許されると思い込んでいた。やがて近い未来に、中国が米国を超える経済大国になり、世界は中国の軍事力と経済力の支配にひれ伏すと誇っていた(中華の夢)。それは、バラク・オバマ大統領(2014~16)とリベラルなマスメディアは受け入れたが、ドナルド・トランプ大統領(2017~)、超党派政治リーダー達、そして外交・安保専門家と保守系メディアは看過しなかった。

 米中経済戦争は対米輸出商品への高い関税をもたらすこととなった。それは直ちに中国へ大きな負担を与えている。トランプ政権による関税圧力がかかる数年前から、既に中国の製品は世界的市場での圧倒的競争力を失いつつあった。中国は、経済発展と並行して、労働賃金が急速に高くなった。当然、商品コストが上がっていた。それに加えて米国の高関税が加われば、対米輸出商品の競争力を失い、収益率が下がり企業としてやれなくなるのは当然である。その大きな変化に耐えられずに倒産企業が激増している。すでに民間企業で倒産連鎖が始まっている。

 2018年8月に発動された500憶ドル分の対中製品への25%関税は、すでに大きく中国国民の消費を低下させている。自動車の新車販売台数は28年間も右肩上がりで伸びてきた。しかし、2018年には前年比-2.8%となり、2019年には-8.2%も落ち込んだ。不動産部門の落ち込みが中国経済を大きく圧迫しているが、それに加えて対米輸出商品への関税が大きな圧力となっていることは間違いない。2019年5月に発動した中国の対米輸出商品2000憶ドル(22兆円)分25%関税は、2020年春ころにはその影響がさらに大きいものとして現れてくるだろう。2020年1月15日、米中両国がワシントンで貿易交渉をめぐる第一段階の合意を文書で署名した。このことは、「中国はいたたまれずに、交渉で大きな譲歩をしてでも合意文書の署名をせざるを得なかった」からであるといえる。

 中国市場の未来に明るい見通しが立たない外資系企業や中国私企業が、米国市場に対して輸出が有利な場所に、徐々にではあるが移動し始めた。移動先は台湾やベトナムをはじめとするアジア諸国である。今後、労働コストの高騰と高関税を逃れるために、日本や米国に帰る企業さえも急速に増加する。その結果、現在以上に失業者が都市部に激増し、あふれることになり、そして大衆の暴動が頻発するようになる。香港のような状況が中国本土に生まれる。これらのことは、米国への消費物資のサプライチェーンの中国脱出がもたらすものであり、そしてそれは固定化される。

②「米国から中国へ流れる米ドルの極少化」

 中国には対米貿易黒字により毎年約3700憶ドル(40兆円)が中国に流れ込んでいたが、それが激減し、しかもそれが固定化される。

 令和2年1月15日、米中両国がワシントンで貿易交渉をめぐる「第一段階の合意」を文書で署名した。この合意では、中国の共産党支配の崩壊につながるであろう「国営企業への政府による資金援助の停止」、「知的財産保護の徹底」、そして「外国企業への中国側へ技術移転の圧力や強要の禁止」等については曖昧にされ、先延ばしにされた。                     

 驚いたことにこの合意では「中国が2年で米国製品(工業品、エネルギー、農畜産品)2000憶ドル(22兆円)分の輸入枠の拡大をする」ことを受け入れた。米国からの対中制裁関税(2019年9月発動)1200憶ドル分には7.5%とする。中国500憶ドル、米国2500憶ドル分の輸出商品にそれぞれ25%の関税を存続させる。この合意書ではその履行状況を両者の実務者レベルでチェックする。トランプ大統領は、もし責任を果たさねば中国からの対米輸出品5000憶ドル分のすべてに25%以上の関税をかけると合意書署名の直後に明言した。

 この合意書の署名は一方的な中国の譲歩による合意がもたらしたといえる。

 中国の習近平政権は自らの弱い立場、追い詰められた経済状況、そして圧倒的な米国の強さを認識しつつある。

 もちろん、「最初に署名された米中合意は全く中途半端なもの」とホワイトハウスは深く認識している。トランプ大統領は「大統領選挙後に本格交渉をする。」と明言している。彼は必ずそのようにするだろう。彼は、今、中国を追い詰めすぎて世界経済に大きな影響を及ぼしたくないと考えているようだ。大統領選の直前に経済問題で影響を与えたくないのである。多くのリベラルな言論人、経済学者、政治リーダーがマスメディアを通し「中国製品に大きな関税をかければ、米国民の消費が落ち込む。ブーメラン現象が起こって米国経済が悪くなる。トランプ政権は国際経済の仕組みが解っていない」と大騒ぎを続けてきた。中国側も彼らの圧力によってトランプの対中政策が変化することに期待をしてきた。しかし、米国経済は彼らの指摘とは逆に、史上稀にみる好調な状態で成長し続けてきた。トランプ大統領への支持率は極めて高い。経済の好況が、豊富なビジネスチャンスを多くの庶民に提供しているため、労働者階層や黒人層の支持が広がっている。あえて、今、トランプ政権は米国経済にまで悪影響をもたらす程の極端な対中経済政策を選択しない。彼が残された宿題を貫徹実行するのは大統領選(2020年11月3日)の後、ドナルド・トランプ氏が第二期政権に入ってからである。

③「債務不履行(default)へと詰める」

 中国からの米国消費物資のサプライチェーンが中国から他の地域に移動すれば、中国への米ドルの供給が半永久的に減少する。現段階でもすでに、中国の実質的外貨準備高は激減している。すでに進行している天文学的な潜在的不良債権によるバブル崩壊の脅威があるが、それに加えて、もう一つの脅威が必然的に出現する。それは中国の金融危機、すなわちデフォルト(国家破産)である。それは、「ある日、ある時、一瞬に起こる重大事態」である。

 自由のない共産党独裁国家であるが中国は国際的貿易で経済が発展してきた。また、それが順調に継続していることにより現在もすべての経済活動が安定している。しかし、所有する米ドルが不足して、中国市場の企業取引、世界との貿易や金融取引の米ドル決済ができなく成れば、国家としての不履行(デフォルト)となる。国家の倒産である。当然、中国内にあるすべての米ドル資産は中国からの逃避が始まる。また海外からの中国市場との取引は停止する。直ちに、中国元は暴落が始まる。連鎖するように不動産バブルが完全崩壊して、中国元はついに紙屑になる。中国経済はハイパーインフレーションに突入する。南米のヴェネゼラのそれが、規模をとてつもなく巨大化しての再来となる(2018年の物価上昇率が年率169万%)。充分で確固たる「外貨準備保有高」を政府もしくは中央金融機関が保有することは極めて重要である。

 中国は「外貨準備保有高」を政府が正確な数字で公表しない。また、その数字の中身も日・米・欧とは基準が異なる。中国の外貨準備保有高の中には「外国からの借金や投資金額」が含まれていると推察されている。そのため実質のそれは公表数字よりもずっと少ないものとみるべきだろう。一方、日本のそれは、いつでも使えるように緊急用に確保されている、現金の米ドルである(1兆3000億ドル2019年)。2014年には中国の外貨準備高は4兆ドル以上といわれた。しかし、2015年ころから中国からの米ドル資本の海外への逃避が激しくなった。膨大な米ドルが海外に流失された。実際の経済の現状に危機感を覚えた富裕者たち(共産党幹部、企業の資産家)が香港で米ドルに換えて海外に持ち出し、預金や投資を行った。中国経済の悪化と信用不安が原因である。その合計は2019年までに1兆400億ドル(114兆円)にもなっている。残りの外貨保有高が約3兆ドルといわれるが、実態は「外国からの借金や投資金額」を含むために、ずっと少ないだろう。日本の外貨保有高と同じか、より少ない可能性さえも考えられる。

 外貨の逃避は今後も続く。中国の債務不履行の時が近づいてくる。

 「中国が持つ巨額な米国債は、強硬なトランプ政権の対中政策に対して極めて強力な武器になる。米国はまもなく強硬策をやめて、中国と政治的妥協をせざるを得ない」という主張がされている。それは全く誤った考えである。米国に対する根本的無知からくる考えだ。米国はヨーロッパ諸国や日本とは全く異なる。 

 米国大統領には合衆国憲法により行政権のすべてを任されている。大統領権限には憲法を根拠として「権力の乱用」という告発はあり得ない。最近、民主党が過半数を握る下院やマスメディアが「トランプが政治権力を乱用している」として大統領を告発して弾劾裁判を決定した。この弾劾騒ぎはやはり上院で直ちに否決されて消えてしまった。米国史上、一度だけ「権力の乱用」という概念で大統領を告発し弾劾をしようとした事があった。それは大きな憲法解釈の誤りであったことが、最高裁判決も含めて現在では定説である。むしろ、合衆国大統領は国民の生命、安全そして財産を守るために必要なすべてを実行できる大統領権限を持っている。

 もし、中国が所有する米国債を市場で一度に大量売り出しをして米国経済を危機に陥れようとしたら、大統領は直ちに「中国は敵国」と宣言し、中国所有の米国債のすべてを「凍結」または「没収」できる。米国議会が定めた「国際緊急経済権限法」もそれを強力に後押しする。中国は自ら所有する資産のうちで最も優良な米国債のすべてを失うことになる。114兆円に相当する資産をみすみす失うようなことを、狡猾で欲の深い中国が実行するだろうか。さらに、しかも、米国債の大量売りの行動は、中国元の極端な下落と米国ドルの中国脱出をもたらし、自らを破産国家に追い込むだろう

 米国債の保有は中国の大きな資産であったが、今は減少し続けている。米国債をドルに換えて中国元を買い支え、資本の海外への逃避を抑えようとしてきた。2013年には米国債を1兆3000億ドル所有していた。しかし、現在は1兆1100億ドルである。日本円で22兆円超の減少である。米国債保有のナンバーワンは、中国に代わって再び日本となっている(保有高1兆1300億ドル)。

 

3 米国の対中貿易戦争の戦略目標

中国元の暴落がもたらす債務不履行(デフォルトDefault

 2019年、中国のGDPの成長率は6.1%であると国家統計局が発表した。共産党中央政府が公認したものであり、他にはないから受け入れるしか選択肢はない。世界の国々と企業もその数字を前提に中国経済を扱っている。この事実は、今後 中国経済に深刻な打撃をもたらす引き鉄になる恐れがある。

 今後、米中貿易戦争の影響が具現化してくる。米国への膨大な消費物資のサプライチェーンは中国からアジア諸国、メキシコや米国内へと移動してゆく。すでにそれは始まりつつある。そして米国から中国へ流入してきた大量の米ドル(現在約3700憶ドル・40兆円以上)が、今後急激に減少しようとしている。中国にとって米国を除いて他に米ドルをこれほど大量に得られる国はなかった。

 一方、中国は内部にも、外部に対しても途方もない債務と債権を抱えている。それらは不良化している。すでに前述しているが、2019年に入り人民大学の向松祚教授が中国不動産バブルの破裂時期が近いことを強く警告している。それは、中国不動産債権・債務のほとんどがすでに不良化していることを指摘している。

 また、「中国全体の債務残高は2600兆円(168兆480億元・2015年末)、GDPの249%である。」という指摘がある。指摘したのは中国社会科学院金融発展試験室・理事長李揚氏である。

 爆発する寸前の不動産バブルを米国から大量に流入する米ドルにより、元を買い支えてその暴落を抑え、爆発する寸前の不動産バブルと中国経済の崩壊を抑えてきたのである。公表される高いGDP成長率に支えられた経済とはかけ離れた、共産党政府が政治的な嘘で飾り立てた実体のない経済成長だったのだ。

 2019年12月始め、中国の武漢で新型コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大が始まった。相当広範囲に広がっていたが共産党政府はその数字を小さく抑え、中央政府のみがその発表をした。当時、欧米の安全医学情報誌に武漢で感染者は10万人を超えていると報道されていた。現在、中国全土で6万人超の感染者、死者1380人(2月14日現在)というが、実際には1~2桁も多いだろう。中国共産党は自分に都合の悪いものは小さく隠して報告し、逆に、自分に都合の良いものは大きく拡大して宣伝する。中国国民はよく知っていたことだが、世界の政治リーダー、企業リーダー、そして機関投資家たちも中国の本質を認識する良いチャンスとなった。

 重要なことは彼らが「中国のGDP成長率6.1%は虚偽の数字で、実際はずっと小さいのではないか?1%、-1%?」と認識を始めることだ。彼らは騙されて価値のない中国元をつかまされていたことを認識することになる。多くの資産家、経営者、投資家たち、果ては共産党幹部までも元を売り米ドルに換えて海外に逃避する動きを始めるだろう。この動きは中国元の暴落をもたらす。共産党が世界の金融市場をごまかすために提示してきた嘘のGDP成長率が「通貨・元暴落の原因となる」というブーメラン現象をもたらすかもしれない。

 元の暴落に対して中国政府所有の外貨準備保有高の米ドルでは全く対応不能となる。債務不履行となり、海外との貿易、企業取引や金融取引が瞬時にストップする。中国元の暴落は歴史上今後も見られないほどの巨大なバブル崩壊をもたらすことになる。

米国はいつ中国元の暴落を仕掛けるだろうか?多分、前述したように2020年11月3日大統領選後となるだろう。

   

習近平政権の選択できる道は?

 危険で悲惨な現実が急速に襲ってくる初期の段階で、習近平政権と中国共産党中央政府がたどらなければならない道は何であろうか?極めて大雑把に見れば、二つの道が見えてくる。

①政治秩序の崩壊、連続する武力紛争、天文学的大量難民を生み出す大陸の出現

中国共産党政治秩序の分裂と崩壊と、武力紛争と混沌が発生する。幾つかの民族集団、軍事的集団また都市国家のような政治組織が現れるだろう。これらの武力紛争が巨大な難民を発生させ周辺の国に甚大な害を与えることになるだろう。中国大陸がシリア化する。

 ソビエト連邦が崩壊(1991年12月)した直後のロシアは、米国をはじめとするヨーロッパ諸国に対して、国家再建に向けての協力を要請しようとしなかった。いや、米欧はロシアを助けようとはしなかったといえる。既に、1991年からロシア経済は激しいインフレに襲われていた。同年の物価上昇率は160%を超え、92年には2,508%となった。しかし、ロシアは政治的秩序を維持したまま、厳しい経済状況を徐々に克服した。ソビエト連邦の終焉にあって偉大だったことはその政治的秩序を失わなかったことである。政治的秩序を維持した大きな要因はソビエト軍が政治指導に従ったことにある。共産主義と共産党の権威は、それらの自壊により全く失われていた。しかし、ロシア国民の愛国精神がきわどい瀬戸際でロシアを支えてくれたのだろう。

 中国元の暴落により中国が債務不履行に陥れば、たちどころに経済全体が停止してしまう。その時に政治的な統一秩序を保つことはできなくなるだろう。

 中国が、経済破綻に直面しながらも統一国家を維持するのには、国土と人口があまりにも巨大すぎるのだ。さらに、ロシアと比べれば、国民の愛国心が遥かに乏しいだろう。

 それに加えて、既に中国共産党の共産主義イデオロギーは全く力を喪失している。現在、共産党が国民を支配する正当性の根拠を「13億の人口を養い、中国全土から餓死者が出なくなった」ことに置いている。習近平政権は「中国の夢」を掲げて、「中国が経済と軍事力の両面で米国に勝り、世界を支配する時代が2049年(建国100)までに到来する」ことを国家の目標としてきた。中国共産党が作り上げた支配の正当性は、国のデフォルトが発生すると同時に泡

 中国人民解放軍は短期間のうちに共産党支配からの独立を試み始めるだろう。それは警察権力を行使する公安部および国家安全部(警察情報機関)との争いへと発展する。しかし圧倒的実力組織である軍によって警察は吸収される。人民解放軍内に存在する習近平派の指導層は直ちに殺されるか、または追放される。現在、人民解放軍が五戦区に分かれているが、それらの支配域と富の拡大のために、互いが武力紛争を起こしながら分裂を重ねて、それぞれが匪賊化してゆくだろう。

 中国大陸は紛争と戦争で大混乱を始める。巨大な難民が発生して周辺の国に押し寄せることになるだろう。このような悪夢が短期間の間に進行すると思える。

②実質的な中国共産党トップが、米国に助けを求め中国の政治・経済の根本改革を行う

 このようなことは起こりえない事だと思うだろうが、しかし他に中国共産党幹部たちの命が永らえる道はない。また中国が奈落の底に一旦落ちることから救う方法はないだろう。

 もし、習近平と中共産党中央政治局常務委員(7人)が断固としてその道を選択し、中央軍事委員会と国防部がその指導に従えば、希望の道が見えてくる。しかも、この行動は中国が債務不履行に陥ってから極めて短い期間に断行されねばならない。

 国家経済の破綻に陥った中国が選ぶべき道は、米国や日欧、そしてIMFの協力を得て経済危機(ハイパーインフレーション)を超えることである。その為には、まず破綻に陥った膨大な数の国有企業と民営企業の活動を順調に回復させねばならない。日・米・欧とIMFは経済危機克服のための経済協力をする代わりに、いくつかの中国の原則の変更を厳格に要求せざるを得ない立場に立たされている。その要求を中国共産党政権が呑まずにはIMFから潤沢な資金が投入されることはあり得ない。

 中国の原則変更第一は「社会主義市場経済」なるものの廃棄である。鄧小平が改革開放政策(1992年~)のために導入したものだ。「共産党の政治支配による経済の自由化」というが、その故に今や、企業活動と世界の市場経済に対して、政治権力による干渉と恐喝を正当化している。国家からの援助を背景とする巨大な国有企業の発展と国内外国企業への恐喝(技術提供の強制)が積極的に推奨されてきた。一般的には考えられないことを、堂々と実行してきた。                       

 中国の原則変更第二は代替政策の実行である。「企業活動の徹底した自由化」と「法の支配の適用」によって実行される。中国政府が運用する「法」の適用ではなく、米・日・西欧が適用している「普遍的価値観に基づく法律とその運用」が適用される。前者の「法の支配の適用」は共産党と独裁者のためのそれとなっている。中華人民共和国憲法では、「人民解放軍」でさえ「国民のための軍」ではなく「中国共産党のための軍」となっている。 

 国家からの援助を背景とする巨大な国有企業の発展と国内外国企業への恐喝(技術提供の強制)が積極的に推奨されてきた。これらはすべて撤廃される。特権階級たる中国共産党の経済力の源が巨大な国有企業群であったが、それは大多数が民営化されねばならない。国の援助で成立し、倒産があり得ない中国国営企業のダンピング商品が溢れる世界市場では、私企業が圧倒される。

公正な競争が成立しない。やがて世界の自由市場は歪み、そして破壊される。

 当然、“膨大な資金投入により開発される知財の窃盗、及びそのために中国企業を活用することを、全政府組織、公安、人民解放軍が完全に停止する”ことは大前提となる。

 中国の原則変更の第三は「国際法の遵守」である。中国は国際法を「なんの価値もない紙屑である」と断ずる。それは彼の本音であり、これが絶え間なく周辺国と武力紛争を起こしてきた。

 フィリピンは南沙諸島の領有権と漁業権問題で中国との間に紛争を抱えてきた。そのためオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に中国の違法性を訴えていた。2017年7月、常設仲裁裁判所は「九段線内と両諸島に対する中国領有権は国際法に基づく正当な根拠が全くない」との判決を下した。すると中国の戴秉国(胡錦濤政権時代の外交責任者)が米国ワシントンでのカーネギー財団・人民大学共催の講演で「国際仲裁裁判所の判決は、なんの価値もない。紙屑のようなものだ」と主張した。この発言を彼が習近平からの許可なしにするはずがない。

 わざわざ米国行政府のあるワシントンで自ら「無法者」であることを宣言した。バラク・オバマ大統領はそれにもあえて触れようとしなかった。

 国際法による平和秩序を追求するうえでも「法の支配」に従わせることは極めて重要なことである。中国の国家戦略を根本から転換することに直結する。すなわち中国共産党の世界赤化戦略を、放棄せねばならなくなる。

 中国の原則変更第四は「習近平政権中枢が“共産党権力と自分のために存在する原則”から“国民のために権力と自分を犠牲にする原則”へと大転換する」ことである。

 中国共産党トップが、米国に助けを求め、中国共産党トップが中国の政治・経済の根本改革に成功するためには絶対的に不可欠である。これを無視して他のすべてはまともな実行ができない。しかしこの原則の大転換は中国共産党幹部たちにとり最も困難なことである。70年間以上も「共産党権力支配と自分の保身のために生きてきた文化」が彼らの内外に深く浸透している。

 

二、日本が米国の対中戦略を破壊する?

 日本は「未来の運命をかける米国の対中国戦略を破壊する」ことのできる唯一の国である。日本の持つ力を中国が活用すれば、「米国の対中国製品への高率関税がもたらす中国の対米サプライチェーンの崩壊」と「米ドル流入の激減とドルの逃避がもたらす通貨・元の暴落」を防ぐことも可能となる。それは「米国の対中戦略を破壊し、失敗に導く」ことを意味する。それは、さらに「日米が修復不能の関係」となり、日本が再び「大陸に利益を求め、米国と対決し、滅びる道を走り始める」という結果をもたらす。

 日本の中小企業が所有する技術とその開発力は恐るべきものである。資本力と経営力を強化すれば大発展が期待できる。ずっと以前から、地方の水源地を含む山間部や不動産を中国人が買いあさる例はよく知られている。高度な技術を持ちながらも後継者のいない企業オーナーのもとに、それを買い取ろうと、不可思議な中国人が訪ねてくる話も巷には多い。米国の対米輸出中国製品に対する関税により、多くの中国の国内企業が、東南アジア諸国に脱出が始まっている。その中国にとって、米中経済戦争で失われつつある中国製品のサプライチェーンとしての立場は日本からの中小企業誘致で解決できる。

 また通貨・元の暴落、米ドルの逃避、それが起こす債務不履行等がもたらす国家破綻を除けるために、日本からの融資と投資が中国を蘇らせる力を持つ。          

 日本企業は全体としてみると巨大資本の所有者である。日本企業(資本金10憶以上)が所有する内部留保は、金融・保険業を除いても総計は463兆円(2018年度・財務省)になる。驚くことに、日本の倍以上の規模である米国企業の持つ内部留保金よりも多いという。200兆円は現金で留保されている。日本企業は有効な投資先を見いだせないで足踏みを続けているうちに、極端な肥満体になってしまった。しかし、中国にとって日本の有り余った資本は垂涎の的であり、現在巧みに騙して取り入ろうとしている。

米中経済戦争が、中国市場に「日本に有利な状態を生んでいる」と期待する財界人たちが多いようだ。多くの政界の与野党議員たちもチャンスが来たと考えている。それを蛇のように知恵のある習近平政権が放置するはずがない。親日ムード造成、与野党への政治工作、そして日本財界と中国への投資勧誘工作が始まっている。その目的を果たすための不可欠な通過点が「2020年4月、習近平主席訪日・国賓待遇」である。これは日本を捕獲するための習近平政権の罠である。そして、それは日本にとり悲劇の始まりを意味するのである。

 

1 自由民主主義の米国と共産党独裁の中国を同等の価値として扱う?

日本政府は2020年4月の習近平主席訪日を「国賓待遇」として受け入れるという。

このことは米国に「奇怪な日本の姿」を印象付けることになる。またG7(先進7か国)諸国には短期間で消滅しない「日本に対する侮蔑感」が残るだろう。

 特にトランプ政権にとって、“中国は人権に対する根本的価値観が正反対の国であり、米国とは共存はできない国家”としてみている。貿易上の利害が相反する国としてのみ、単純に位置付けている訳ではない。

 この3年間でも2つの重大事件の顕在化が中国の本質をよく示している。また米国の対応にも彼らの国家的本質が良く表れている。

 生々しいのは北京政府による香港市民への弾圧である。英国による香港返還の時(1997年)に中国は「50年間は一国二制度を取り、社会主義政策は行わない」と「高度な自治の適用」を約束した。しかし、20年も経ない2014年11月に駐英中国大使が「高度な自治の適用は無効である」と英国政府に宣言した。既に始まっていた言論の自由と人権への抑圧に反対する学生たちが、雨傘運動をおこしたが香港市民の多くを蜂起させることはできずに鎮火させられた。2019年になり、中国政府の要求により香港行政府が「逃亡犯引き渡し条例」を香港に適用しようとした。自由と人権を尊重し、それに反対する香港学生たちと同調する市民の反対デモが6月には200万人におよんだ。若者たちは香港の未来に希望を失い、明日のデモに参加することを唯一の希望としている。また、失望した学生や若者の自殺が連続した。特に中国建国70周年記念日(10月1日)を迎える直前では、軍の動員による鎮圧が決行される寸前にあった。しかし、米国議会両院が「人権基本法」を議決し、断固として北京の香港弾圧反対の意思を表明した。米国トランプ大統領は上下両院で可決した「香港人権法」に署名した。この動きは、米国による香港の金融上の優遇処置が停止される可能性を秘めていた。それを恐れた中国政府は軍による武力鎮圧を停止した。

 その後、11月24日には香港区議選が行われ、民主派が85.8%を得る大勝利を獲得した。民主派が香港市民の圧倒的支持を得たのだ。その後、事態は膠着状態に入った。しかし、軍による徹底的鎮圧に失敗した北京政府は、反中政治組織のリーダー達を今後は公安部を使い、激しく追い詰め、逮捕を重ねるだろう。民主派の学生、若者、そして香港市民の新しい熾烈な戦いは始まっている。

 新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒への弾圧も極めて厳しく継続されている。2017年ころに収容施設が建設され、現在も約100万人以上が自由を奪われ、家族と引き離され、そして“裁判を経ずに”施設内で拘束されている。いつ釈放されるか全くわからない。2018年、同自治区の共産党副書記の連絡文書が漏れ、その事態が暴露された。国際調査報道ジャーナリスト連合(英国系)がその文書を入手した。国連人権委員会も同時に“ひどい人権侵害である”と中国を告発した。

 その文書によれば、「収容施設は高度に警備された刑務所にせよ、絶対に脱走を許すな、違反行動者には厳しい規律と懲罰、中国標準語への矯正学習を最優先、宿舎と教室の監視カメラに死角を失くせ」等を命令している。2018年10月、米国マイク・ペンス副大統領は、“中国への宣戦布告”と称されるほど演説(ハドソン研究所)の中でウイグル人への宗教弾圧に触れて“中国の重大な過ちをトランプ政権と米国民は決して許さない”とまで宣言した。マイク・ポンペオ国務長官はウイグル人弾圧について「現代における最悪の人権の危機。今世紀の汚点」と位置付けた。

 EU離脱で経済が混迷し、中国への経済的依存度の高い英国でも、国連監視団が“新疆ウイグル⾃治区に即時かつ無制限に”アクセスできるように中国政府に求めている。

 欧米諸国がこのように中国に激しく対応しているのは“このような中国の過ちを放置すれば、自分の国が根本から破壊される”と確信しているからである。国家存立の最も根本的価値観を曲げて、うわべだけの良い関係を保とうとはしない。彼らは、すべてを許し、黙認するようなことはしない。妥協しない事柄と妥協できるものとを分け、守るべきものはしっかり保とうとする。

 日本の同盟国であるアメリカ合衆国は、前述したように真剣な対策をとってきた。しかし、中国の人権蹂躙に対し黙認してきた。首相をはじめ、国として公式の抗議をしなかった。それに加えて昨年以来、2020年4月には中国の習近平国家主席を「国賓」として迎えるために準備をしてきた。それに関しては政府および与党が非常に積極的である。「国賓」として日本が迎えるという。賓客の中でも「最高位の客」として「日本国民の統合の象徴としての天皇皇后両陛下」が迎えるのである。各種世論調査でも“日本国民は、過半数以上が中国を嫌っている”にもかかわらずである。

中国は共産党独裁国であり習近平主席にすべての権力が集中している。ウイグル自治区や香港で行われている恐るべき人権蹂躙を習近平主席が知らないだろうか。もちろん熟知している。それどころか直接の指揮をとっている。日本はそんな国の独裁者を日本国家が迎える最高位の「国賓」として迎えようとしている。

米国は“日米関係には、根本的な価値観の違いがあり、超えられない深い谷がある”と認識するだろう。やがて、“日本は自由民主主義の米国と共産党独裁の中国を同等の価値として扱うのか?”という米国世論が巻き起こるだろう。「日本は民主主義を貫く伝統的価値観を無視して経済利益だけを追求する国」という対日蔑視感情がG7等の先進諸国に広がるだろう。

 

2 一時の経済的利益のために、日米同盟を破綻させるな

 経済利益のために日米同盟を破壊するのは極めて愚かなことだ。米中経済戦争が、中国市場に「日本に有利な状態を生んでいる」と期待する財界人たちが多いようだ。多くの政界の与野党議員たちもチャンスが来たと考えている。これは全く誤った考えだ。それを短絡的に実行に移したならば日本は「米国の対中戦略を破壊する米国の敵対国家」となる。そして日米同盟は消滅する。

  中国経済が大発展の結果、今や傍若無人の国となり、日米の大きな脅威として出現したが、そのきっかけを作ったのは自民党主導の日本政府自身であった。またそれを積極的に容認したのは、ソビエト崩壊後に「誤った中国認識とEngagement戦略を採用」した米国ブッシュ政権であった。

 1989年6月4日、自由を求めて民主派の学生・労働者の北京でのデモは50万人を超え、天安門広場に集中した。戒厳令の発布後、人民解放軍は一般市民を武力鎮圧した。この時の犠牲者数は諸説ある。中国政府は完全に情報統制をした。当時の英国大使が翌日(6月5日)に英国政府にレポートした機密電報によると「1万人以上の一般市民が殺され、死体は即座に処理された。」という。世界はショックを受け、中国に進出していた世界の企業が引き上げた。経済的に孤立していた中華人民共和国を最初に受け入れ関係回復をしたのは、日本だった。

 海部俊樹首相は第16回先進国首脳会議(1990年7月)で“中華人民共和国に対する円借款”を再開することを宣言した。日本が“先進諸国で最初の対中制裁の解除”を行った。

その後、海部首相が訪中し中国首脳の歓迎を受けた。宮澤喜一首相(1991,11~93,8)は江沢民主席の要請に応え「天皇訪中1992,10」を実現させた。この事実は欧米の対中制裁解除に大きな影響を与えた。この時に米国は未だ中国に対するEngagement戦略を実行していた。それは中国を仲間に入れ、更に発展強化して、ソビエトの軍事的圧力を対西ヨーロッパと対中国に分裂さえ、ソビエト連邦を消耗させようとするものだった。この対中戦略はバラク・オバマ政権まで継続された。1990年代は日米両者がともに間違った中国認識にとらわれていた。その為に日本が中国大発展の原因となろうとも、日米同盟は決して傷つかなかった。

 しかし、米国は今や対中戦略を逆転させた。この動きはオバマ政権(2009,1~17,1)末

に始まっていた。ドナルド・トランプ大統領の登場(2017,1~)とともに明確になった。米

国は45年間も継続してきた対中戦略を完全破棄した。米国の対中戦略は、共産党独裁支配

の中国を崩壊させ、中国のレジュームチェンジを目指すようになった。中国は、米国とは共

存できない国(敵性国家)であると位置づけた。米国は、米中経済対立を単に“激しい米中貿

易摩擦“とはみていない。まさに「経済戦争」であり、「武器を使わない戦争」であるとみて

いる。その到達点は“中国の経済崩壊による共産党支配の終了”か、もしくは、少なくとも“長

期にわたる中国経済成長の喪失“である。危険なことは“日本側が米国の変化について、全く

認識していない”ことである。

その結果として現れたものが“2020年4月、習近平主席訪日・国賓待遇”である。

日本の経済界は経済発展への活路を開くチャンス到来と誤認しているようだ。反対にやがて

起こる中国経済の崩壊とともに、日本経済にひどい被害がもたらされる。                

親中派政治勢力や宗教勢力も同様だ。現実から離れた認識を思い込みで信じている。

彼らは中国側からの「天皇皇后両陛下の訪中」提案を待っているかのようである。それは日

本の平和をもたらさない。逆に、日米同盟崩壊と米中軍事対決をもたらし、日本は世界で貧

しい孤児となるだろう。

 

3 IMFを立て米国・英国・台湾とともに

 今、日本が中国に進出して企業がこぞって投資や融資をすれば、すべてが不良債権化

し失われる。日本の蓄積された資本が失われるその後日本経済の収縮が始まる。もとに戻る

ことはないだろう。日本の沈没である。

日本がどのような道をたどろうが、米中経済戦争で圧倒的に有利な米国は、中国を一方的に

追い詰めるだろう。対米輸出商品の企業の多くが中国から逃げ出す。もしくはアジアの他の

地域が生産して米国へ輸出するようになる。すなわちサプライチェーンの変更である。

それにより中国への年間3700億ドル(40兆円以上)の米ドル供給の多くが失われる。香港

問題を含めて米国の金融操作で元が不安定となり、中国からドルの逃避が起こり、元の大暴

落に結び付く可能性がある。その時に中華人民共和国が終焉を迎える。2020年の初めから新

型コロナウイルスの感染拡大は、中国経済にダメージをあたえ、終焉の時を更に近づけた。

日本が共産党独裁国家と心中するなんて全く馬鹿げたことだ。

 元の暴落は時間の問題だ。その時には習近平政権は迅速にIMFに介入依頼をする以外に道がなくなる。失業者の激増と大規模な大衆暴動が始まれば方策が無くなる。この場合合、中国中央政府は戦争を起こして内部の秩序を維持しようとするかもしれない。また、軍の一部と連携する共産党保守強硬派が軍事クーデターを起こすかもしれない。

米国の軍事力の背景無しの経済政治政策では対応できない。そのような状況下では日米安全保障条約が決定的な力を発揮する。

米国政府との連携で日本政府はIMFに協力すべきであり、米国資本と連携しながら日本企

業は中国に徐々に進出を始めたほうが良い。

効果的でリスクが少なく、且つ、真に中国の再生を実現するためには、台湾政府と台湾企業

群との協力が極めて重要である。トランプ政権はその方向で政策を進めている。日本政府は

中国に対した臆病になりすぎている。積極的な対台湾政策が無い。

このことは後に必ず“深く後悔する”ことになるだろう。

 

2020年3月12日

共創日本ビジネスフォーラム研究所